オペラ座の怪人を観劇していて終盤に出てくるドンファンの勝利というシーン。
何かを暗示しているのはわかるけど、何度観てもこのシーンだけどういう意味なのか少し不明。
音楽もいいし、感動はするけど実際のストーリーやどういうことを暗示しているか知りたくなりました。
今回は、ドンファンの勝利に関するストーリーや音楽、どんなことを暗示しているのかを紹介します。
ドンファンの勝利の公演までのストーリー
オペラ座にはまた、コーラスガールのクリスティーヌをプリマ・ドンナにするよう数々の脅迫状が届く。
全て裏側で怪人ファントムが動いており、脅迫を聞かなかった見せしめとして、死体が吊るされた。ファントムのクリスティーヌへの狂った愛によって、手段を選ばない彼に対しクリスティーヌは恐怖心が加速していく。
婚約者の愛するラウルに相談し、ファントムに打ち勝とうと2人は決心を固める。ファントムの幼少時代を知るマダム・ジリーに正体を明かしてもらい、ラウルは警察と共に彼を捕まえようと決めた。
ファントムが自ら作曲した『ドン・ファンの勝利』をクリスティーヌが主役で公演すれば、必ずオペラ座に彼が現れると考えたラウルは警察を配備し、彼の訪れを待つことにする。
ラウルは警官隊を率いて劇場に乗り込み、彼らに厳重に警備を敷くように指示した。5番ボックスがよく見える位置に配備された警官には、ファントムが現れたら、タイミングよく銃殺するよう命じた。彼らを嘲笑うかのようにファントムが登場し、「ここだ、ここだ」と警官たちを翻弄する。
銃を持った警官が発砲してしまうが、ファントムを仕留めることができず作戦は失敗に終わる。そんな中、オペラの幕が上がり、『ドン・ファンの勝利』が上演される。
ドンファンの勝利とは
『ドン・ファンの勝利』はファントムの創作物であり、この作品には音楽の天使と扮したファントムの本音が表現されている。
この舞台にはカルメンに出てくるバスティアの酒場のようなセットが置かれ、テーブルの上には、
豚の丸焼き
果物
うさぎ2匹
毛がついたままのキジ
ゴブレット
りんご
マンドリン等
が置かれている。
りんごは
例えばアダムとイブ、白雪姫に登場するもの等、ヨーロッパでは愛の象徴を表わす果物として認知されている。
音楽
その背景の音楽は不協和音と全音音階で構成されており、歌自体もピアンジが何度も繰り返し間違えるぐらいのとても歌いにくい音階でできているのが特徴だ。不気味さを演出するために、不協和音で音をぶつけている感じを全面に表現している楽調だ。
登場人物
『ドン・ファンの勝利』には悪役しか出てこない。まずは、売春宿の夫婦が登場する。酒を気前よくどんどん注ぎ、後から高額を請求するというのがお決まりの手法だ。
高級娼婦のカルロッタは自分で相手を選ぶことができる。りんごを投げる行為がそれを許したというサインになっており、悪党2人にりんごを投げている。カルロッタとの違いを象徴するように、普通の娼婦も2人出てくる。この2人は、何振り構わず客を捕まえるため、色気を全面に出している。服装も露出高めのシャツを着ていたり、コルセットをわざと見せるように巻いていたりと安っぽさを醸し出している。
赤と黒の装束を身に付けた聖職者が2人出てくる。普通の聖職者との違いを出すために、このような格好をしている。小姓2人が出てくるが、1人は女好きで1人はゲイという役柄だ。悪党はカルロッタにりんごを投げられる人たちで、色々な悪事を働いて生計を立てている。
ここからは主役級の紹介。パッサリーノはドンファンの家来である。ドンファンのために彼が殿様の服装をして、女を連れて来るという設定になっている。ドンファンと女が寝室から出られない状況を作り、2人が情事に耽る。
クリスティーヌはアミンタという役で、パッサリーノがひっかけてきた娼婦の1人。また、メグ・ジリーはジプシーの女の役。帽子のようなところに小銭がくくりつけられている。
ドンファンの相手をして稼いだ小銭を嬉しそうに、ジャラジャラと鳴らしている。
ドンファンの勝利のストーリー
『ドン・ファンの勝利』は、ミュージカル「オペラ座の怪人」の中で上演される架空のオペラ作品として登場します。以下は、その内容と物語全体との関連性についての解説です。
実際のストーリーは、売春宿の女将役のカルロッタが舞台に登場するところから始まる。
「殿様は今、感極まるところ。生贄の牛、啼き声立てる。火遊びの高いつけを払うぞ、高いつけだぞ。よろしいか、よろしいか。特別のご馳走、よだれが垂れる。殿様ご満足、ドンファンまたもやご満悦。」
というセリフを言う。
これらのセリフは、物語の中でのさまざまなシーンやキャラクターとの関連性を持っています。
生贄はクリスティーヌを指し、火遊びは黒魔術で使用するろうそく等を指す。高いつけとは悪魔に取りつかれることを指す。「
殿様は今、感極まるところ」は作品冒頭でラウルが歌う「オルゴールこれだ」というメロディに似ているように作られている。
さらに、「特別のご馳走、よだれが垂れる」は1幕でクリスティーヌが目を覚ます前にファントムがオルガンで演奏していたメロディーと同じものだ。
その後、ドンファン役のピアンジと従者のパッサリーノ役が現れる。2人はクリスティーヌが演じる娼婦のアミンタを騙し、ドンファンのものにするため、悪だくみをする。ここで、「パッサリーノ、忠実な友よ、どんな具合かね?」、「娘をまんまと騙されて、私をあなたと思い込み」というセリフが入る。
アミンタを騙すために、ドンファンはわざと従者の格好に変装し、小部屋に隠れる。そこへ、恋に胸を躍らせたアミンタが登場し、「ただ喜びだけが、ただ恋の夢だけが」とセリフを言う。テーブルの上のりんごを手に取り、アミンタが食べようとしたところにドンファンが現れる。そして、クリスティーヌが持っているりんごをゴブレットと入れ替える。このシーンは、少女から大人になることを暗示している。
何か様子が変だと感じながら、芝居を続けるクリスティーヌ。
「ポイント・オブ・ノーリターン」が2人のデュエットで歌われる。クリスティーヌはどうしても違和感をぬぐえなかったため、ドンファンの頭巾を脱がせてみると、何とピアンジがファントムに入れ替わっていたのだ。
正体がバレてしまったファントムは、ラウルが以前クリスティーヌに屋上で歌った「オール・アイ・アスク・オブ・ユー」のフレーズを歌う。それと同時に、クリスティーヌから奪っていた婚約指輪を彼女の指にはめる。「クリスティーヌ、君が全て・・・」とまだ歌が歌い終わらないうちに、ファントムの仮面をクリスティーヌが剝ぎ取ってしまう。
地下で以前見た時よりも、さらに醜くて恐ろしいファントムの顔がそこにあったのだ。ファントムはシャンデリアを落下させ、劇場は逃げ惑い、オペラ座は大惨事になった。
その間にクリスティーヌはまた地下のファントムの隠れ家に連れ去られてしまう。舞台上では、ファントムに無残な姿にされてしまったピアンジにカルロッタが近寄り、泣きすがる様子がそこにあった。
連れ去られたクリスティーヌを追いかけようとするラウルに、マダム・ジリーが声をかける。「ファントムがクリスティーヌを連れていった場所を知っている」と言うのだ。さらにファントムは投げ縄(ラッソ)の名手なので、縄で首をくくられないように、常に目の高さに手を挙げているよう指示する。
原作のオペラでは
『ドン・ファンの勝利』自体はここで終了だが、実際のオペラ『ドン・ジョバンニ』では、貴族の娘をたぶらかし、その父親の怒りを買って、娘の父親に地獄に落とされるという話が原作となっている。この『ドン・ファンの勝利』では、ドン・ファンが死なない設定になっていたが、怪人ファントムによって作曲され、ピアンジが殺されたのだから、どちらも高いつけを払わされたという解釈が正しいのかもしれない。
また、ドン・ファンが登場すると、パッサリーノは「娘まんまと騙されて、私をあなたと思い込み」と歌う場面がある。クリスティーヌがファントムを音楽の天使と信じ込んでいたところを重ねて指しているとも言われている。
ドンファンの勝利とファントムとクリスティーヌの関係
『ドン・ファンの勝利』の物語と、ファントムやクリスティーヌの関係には、外見と内面の美しさ、そしてそれに対する社会の価値観という共通のテーマがあります。ファントムは外見の醜さに苦しみながらも、彼の音楽的な才能や情熱は彼の内面の美しさを示しています。
一方、クリスティーヌやオペラ座の他の人々は、ファントムの外見に基づいて彼を恐れたり、避けたりすることが描かれています。この葛藤は、『ドン・ファンの勝利』の中でのドンファンやアミンタの関係とも響き合っています。ドンファンは外見や地位によって女性を誘惑するが、彼の真の性格や動機は物語の中で問題視されます。
これは、ファントムがクリスティーヌに対して持っている真の愛と、彼の外見や過去の行動との間の葛藤を反映していると言えるでしょう。
ファントム(怪人)とクリスティーヌの関係
「オペラ座の怪人」の中心となるのは、ファントムとクリスティーヌの複雑で情熱的な関係です。
ファントムは、オペラ座の地下深くに住む孤独な天才で、彼の外見の醜さから世界から隠れて生きています。一方、クリスティーヌは若くて才能ある歌手で、ファントムの音楽の指導を受けています。
彼女はファントムを「音楽の天使」として知っており、彼の音楽的な才能に深く引かれています。しかし、彼の外見や過去の行動に対する恐れや疑念も持っています。
『ドン・ファンの勝利』の物語と、ファントムやクリスティーヌの関係には、外見と内面の美しさ、そしてそれに対する社会の価値観という共通のテーマがあります。
・音楽の絆
・愛と執着
・救済と救い
・対立と選択
音楽の絆
ファントムはクリスティーヌの音楽の師として彼女に歌を教え、彼女の才能を開花させました。この音楽を通じた絆は、彼らの関係の基盤となっています。
愛と執着
ファントムはクリスティーヌに深く愛情を感じており、彼女を手に入れたいという強い執着を持っています。一方、クリスティーヌはファントムに対して複雑な感情を抱いており、彼の才能や情熱に魅かれつつも、彼の行動や性格に恐れを感じることもあります。
救済と救い
クリスティーヌは、ファントムの孤独や苦しみを理解し、彼を救おうとする気持ちを持っています。ファントムもまた、クリスティーヌを通じて自分の救済を求めています。
対立と選択
ラウルとの三角関係が進行する中で、クリスティーヌはファントムとラウルの間で葛藤し、最終的に自分の選択を下すことになります。
まとめ
今回はオペラ座の怪人のシーン「ドンファンの勝利」について調べて執筆しました。
歌がオペラということもあり、歌詞が分かりずらい点、設定が分かりずらい点があります。
ただ、さすが怪人。全ての行為や歌詞、設定に意味を持たせていました。次回観劇するときは、そういう設定も考えながらみようと思います。
コメント